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[FA]無題
遠くから汽車が走る音が聞こえる。
巡っているはずの星の下を、音も無く雲が滑っていく。
満月に一つ足りない月が、白く白く輝いている。
「——」
エドワードは古書から顔を上げた。
どこからか、歌が聞こえたからだ。
「誰だろうね。こんな深夜に」
アルフォンスがそう言って、少しガタつく窓を開けた。
夜気が床に溜まった埃と混ざる。
常夜灯がいくつか灯っているだけで、通りに人の姿は見えなかった。
月光に溶けていくような澄んだ歌声は、その出処を明かさない。
「綺麗だなぁ」
頁に栞を挟み、エドワードもアルフォンスに並んだ。
なんとか聞き取れる詞は、綴りの教本に載っていそうなほど素朴で。
ひたすらに素直な展開と音節毎に長く伸びる旋律は、聖歌を思わせた。
「歌姫は毎夜祈りの歌を歌い、国を守る、か——」
「あぁ、あったね。そんな昔話」
遠い思い出。
小さな箱にしまって置いてきたように思えて、実はどこまでも持ってきているもの。
無論歌い手は、エルリック兄弟が聴いていることを知らないだろう。
誰に届かせようとしているのかは、兄弟には分からない。
拡散する歌声の、空気との境界に、光のように純粋な感情が振動し、共鳴しているような気がするだけだ。
「この人も、何かを祈ってるのかな」
歌がループする。
目蓋を透かす月光を感じながら、エドワードは応えた。
「さぁ、な」
了
----------------------
あきの『歌姫』が大好きです。
巡っているはずの星の下を、音も無く雲が滑っていく。
満月に一つ足りない月が、白く白く輝いている。
「——」
エドワードは古書から顔を上げた。
どこからか、歌が聞こえたからだ。
「誰だろうね。こんな深夜に」
アルフォンスがそう言って、少しガタつく窓を開けた。
夜気が床に溜まった埃と混ざる。
常夜灯がいくつか灯っているだけで、通りに人の姿は見えなかった。
月光に溶けていくような澄んだ歌声は、その出処を明かさない。
「綺麗だなぁ」
頁に栞を挟み、エドワードもアルフォンスに並んだ。
なんとか聞き取れる詞は、綴りの教本に載っていそうなほど素朴で。
ひたすらに素直な展開と音節毎に長く伸びる旋律は、聖歌を思わせた。
「歌姫は毎夜祈りの歌を歌い、国を守る、か——」
「あぁ、あったね。そんな昔話」
遠い思い出。
小さな箱にしまって置いてきたように思えて、実はどこまでも持ってきているもの。
無論歌い手は、エルリック兄弟が聴いていることを知らないだろう。
誰に届かせようとしているのかは、兄弟には分からない。
拡散する歌声の、空気との境界に、光のように純粋な感情が振動し、共鳴しているような気がするだけだ。
「この人も、何かを祈ってるのかな」
歌がループする。
目蓋を透かす月光を感じながら、エドワードは応えた。
「さぁ、な」
了
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あきの『歌姫』が大好きです。
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